親が認知症になる前にすべき口座凍結対策|家族信託・任意後見の基本

親の介護・相続対策

「親が認知症になったら、銀行口座はどうなるのか?」50代になると、親のお金や介護の問題が急に現実味を帯びてきます。

広告について:本記事には広告・アフィリエイトリンクを含む場合があります。

この記事では、以下の3点をわかりやすく解説します。

  • 親が認知症になると口座がどうなるか
  • 家族信託・任意後見・成年後見の違い
  • 親が元気なうちに確認しておきたい準備

結論から言うと、認知症と診断されてからでは選べる対策が限られます。口座凍結に備えるには、親が元気なうちに家族信託や任意後見などの選択肢を検討しておくことが重要です。

50代が今すぐすべきことは1つ——「元気なうちに」任意後見か家族信託の準備を始めることです。親が認知症と診断されてから動くと、選べる対策が限られる場合があります。口座利用が制限されると手続きに時間がかかり、親の望む老後の暮らしを支えにくくなることがあります。「うちの親はまだ元気だから大丈夫!」だからこそ今のうちに対策が必要なんです。


法律・相続まわりの注意:口座凍結、代理人手続き、成年後見、家族信託などの扱いは、金融機関、家族構成、親の判断能力、財産内容によって変わります。この記事は一般的な整理であり、「この方法なら必ず大丈夫」と断定するものではありません。実際に手続きを進める前に、銀行、司法書士、弁護士、税理士、地域包括支援センターなどへ確認してください。

「元気なうちに動く」しかない!3つの理由

理由① 認知症高齢者の資産が2030年に533兆円に達するが、備えているのは5%だけ
三井住友信託銀行の試算では、軽度認知障害(MCI)を含めた認知症高齢者の保有資産は2030年に533兆円に達します。しかし成年後見制度を利用しているのは認知症患者のたった5%(約25.9万人)。残り95%の資産が、「凍結リスク」にさらされたまま放置されている状態です。

理由② 口座凍結は「ある日突然」起きて、解除まで数カ月かかる
銀行の窓口で手続きをした際、行員が「この方は判断能力がない」と判断した瞬間に口座が凍結されます。解除には成年後見人の選定が必要で、家庭裁判所への申立てから数カ月かかるのが普通。その間、医療費も介護費も自分の貯金から立て替え続けることになります。しかも後見人は弁護士・司法書士などの専門家が8割以上を占め、本人が亡くなるまで月2〜6万円の報酬を払い続けることになります。

理由③ 日本の「任意後見」の普及は英国の78分の1——制度はあるのに使われていない
英国では任意後見の登録件数が934万件、ドイツでは648万件。一方、日本はわずか12万件です。「元気なうちに後見人を自分で選ぶ文化」が海外ではすでに常識になっています。日本でも制度は存在するのに、ほとんどの人が「知らない」「自分には関係ない」と動かないまま手遅れになっています。

任意後見の登録件数
英国 934万件
ドイツ 648万件
日本 12万件(英国の約78分の1)

出典:英国2025年3月末、ドイツ2024年末、日本2025年時点

口座凍結後に困ることを時系列で見る

口座凍結で本当に困るのは、預金があるのに家族がすぐ動かせないことです。どの段階で何に詰まりやすいのかを、時系列で見ておきましょう。

時期起きやすい困りごと家族が確認したいこと
認知症の診断前親はまだ自分で手続きできるが、家族が口座や保険の全体像を知らないメイン口座、年金の振込先、公共料金の引き落とし口座を一緒に確認する
判断能力が落ち始めた時期ATMの暗証番号忘れ、通帳紛失、詐欺電話への不安が増える一人で大きな送金をしないルール、連絡先、相談先を決めておく
銀行が本人確認に慎重になる時期家族が代わりに引き出したくても、本人の意思確認が難しく手続きが止まることがある金融機関の代理人制度、家族カード、任意後見、家族信託などを早めに相談する
介護費・施設費が必要になった時期入院費、施設入居金、介護用品代を誰が立て替えるかで家族間の負担が偏る毎月いくら必要か、誰が一時的に払うか、記録をどう残すかを決める
相続発生後相続人全員の確認や書類集めが必要になり、預金をすぐ使えない場合がある戸籍、遺言書、財産一覧、連絡先を保管場所ごと家族で共有する

ポイントは、凍結してから慌てるのではなく、親が元気に会話できるうちに「お金の流れ」と「相談先」を見える化しておくことです。

現状の把握〜相談!3ステップ

Step1:親の資産マップを今すぐ作る
銀行口座・不動産・証券口座・保険がどこにあるかをリスト化して家族で共有します。「どこに何があるかわからない」は、口座凍結後の最大の混乱源です。金融機関の「予約型代理人サービス」も元気なうちに登録しておくと、不動産売却を伴わない引き出しに対応できます。

Step2:「任意後見」か「家族信託」かを整理する
不動産の管理・売却が中心なら家族信託(柔軟性が高く、契約後すぐ動ける)、療養看護まで含めて備えたいなら任意後見(本人が後見人を自分で指名できる)が向いています。両方の組み合わせも可能です。今国会で提出された民法改正案では、監督人なしでの任意後見運用が認められる方向で、使い勝手が大きく改善される見通しです。

Step3:司法書士か弁護士に相談して動く
制度の選択に「絶対の正解」はなく、家族構成・資産内容・兄弟の有無によって最適解が変わります。相談だけなら無料窓口も多くあります。「考える」より「話を聞きに行く」が最速の一歩です。

これだけ押さえておけば大丈夫!親と話すための質問リスト

いきなり「認知症になったら口座が凍るかも」と切り出すと、親も身構えてしまいます。まずは、生活を守るための確認として、次の質問から始めるのがおすすめです。

親に聞いておきたい質問

  • 年金はどの口座に入っている?
  • 公共料金、保険料、介護サービスの支払いはどの口座から落ちている?
  • 通帳、キャッシュカード、印鑑、保険証券はどこに保管している?
  • 入院や施設入居でまとまったお金が必要になったら、どの預金から使うつもり?
  • 銀行や証券会社から大事な書類が来たら、誰に見せてほしい?
  • もし自分で手続きが難しくなったら、誰に手伝ってほしい?
  • 司法書士や弁護士など専門家に相談することに抵抗はある?

一度で全部聞く必要はありません。通帳を見せてもらうより先に、「急な入院で困らないように、支払い口座だけ一緒に確認したい」と伝えると、話し合いのハードルが下がります。

思い当たりませんか?50代サラリーマンがやりがちな失敗3選

  • 「うちの親はまだ元気だから大丈夫」と動かない——認知症の初期症状は本人が気づきにくい。「元気なうちに動く」が間に合うギリギリのラインです
  • 「困ったら成年後見制度がある」と思っている——法定後見は「口座が凍結されて初めて知る」ケースが大半。手続きに数カ月かかり、後見人も自分では選べません
  • 「兄弟で後でまとめて決めればいい」と先送りする——家族信託は全員の合意が前提。親が判断能力を失ってからでは、合意形成そのものができなくなります

トイプー先生の相続対策実践記

私の場合は、まさにこの記事にある通り、父親が現在80歳(資産4,000万円くらい)で元気ですが全く対策はしていませんでした。そこで「おやとこ」という家族信託サービスに相談してみました。少し費用は高めですが、資産状況をスマホで管理できたりと使い勝手が良さそうなので、父親に資料を送付しました。一応前向きに捉えてくれたみたいで、現在元銀行員の叔父に相談しているとのことです。

認知症と口座凍結は、親世代だけの問題ではありません。2040年には認知症+MCI合わせて1,200万人近くに達する見通し——他人事でいられる時代はとっくに終わっています。まずはこうしたリスクを理解したうえで、まずは家族で話題にしてみてください。それだけで、何も動いていない9割の人より一歩先に立てます。


ここまで読んで「親の財産管理・相続をトータルで考えたい」方は、以下の記事もあわせて読んでみてください。

・相続税の対策も合わせて確認したい方はこちら
 → 50代からの相続税対策完全ガイド|親と確認すべき3つの準備

・定年前のリスク全体を把握したい方はこちら
 → 定年前50代が知るべき資産リスク5つ|インフレ・AI・口座凍結への備え方

主な参考資料

免責事項:本記事は、筆者個人の学習・実践記録をもとにした一般的な情報提供であり、投資・税務・法律・相続手続きの助言ではありません。認知症、口座凍結、成年後見、家族信託、相続に関する判断は、ご家庭の状況や金融機関の扱いによって変わります。実際の手続きは、銀行、司法書士、弁護士、税理士、地域包括支援センターなどへ確認してください。
タイトルとURLをコピーしました