今日の日経新聞には「軽度認知障害(MCI)を含めた認知症高齢者の保有資産が、2030年には533兆円に達する」という衝撃の試算が掲載されています。しかし、成年後見制度を利用しているのは認知症患者のたった5%に過ぎず、膨大な資産が「凍結リスク」にさらされたまま放置されている状態です。医療費を払おうとしたら親の口座から引き出せない——これは突然起きる現実です。クロっちとこの記事を読み込んで、50代の私たちが今すぐ備えるべき問題を整理していきます。
なぜ口座が凍結されるのか
銀行の窓口で手続きをした際に、行員が「この方は判断能力がない」と認識した瞬間に口座が凍結されます。全国の成年後見センターには「銀行に伝えられて初めて成年後見制度の存在を知った」という相談が後を絶たないそうです。
凍結を解除するには成年後見人の選定が必要ですが、家庭裁判所への申立てから解除まで数カ月かかるのが普通です。その間、医療費や介護費用を自分の貯金で立て替え続けた家族が疲弊するケースも珍しくありません。さらに後見人は弁護士・司法書士などの専門家が8割以上を占め、本人が亡くなるまで毎月報酬(月2〜6万円が目安)を払い続けることになります。「資産を守る」ことが最大の目的となることから後見人から旅行や外食を「贅沢」と制限されるケースもあり、「親の望む老後の暮らし」からかけ離れていくリスクも無視できません。
「元気なうちに」が唯一の正解
では、どう備えればいいのか。鍵は「認知症になる前、元気なうちに動く」ことです。選択肢は主に2つあります。
①任意後見:まだ判断能力がある段階で、自分で後見人を指名して契約を結ぶ方法です。家族や信頼できる人を選べるため本人の意思が尊重されやすく、今国会に提出された民法改正案では監督人なしでの運用も可能になる見通しです。
②家族信託:親が信頼する家族に不動産・預金などの管理や処分を託す契約です。不動産売却や資産活用の柔軟性が高く、契約後すぐに動けるのが利点です。ただし裁判所の監督がないため家族全員の合意が必要で、療養看護の支援ができない点は覚えておきましょう。どちらの制度が適しているかは家族の状況によって異なるため、まず司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
📊 任意後見の登録件数 国際比較
12万件(英国の約78分の1)
出典:英国2025年3月末、ドイツ2024年末、日本2025年時点
英国やドイツなど欧州では「元気なうちに備える文化」がすでに常識となっています。制度改正が進む今こそ、備えるチャンスと言えそうです。
50代サラリーマンの取るべき行動と心構え
- 親が70代以上なら今すぐ専門家に相談する——任意後見・家族信託について司法書士や弁護士に相談を。相談だけなら無料窓口も多い。「うちの親はまだ元気」という過信が、口座凍結後の手遅れを生む
- 親の資産マップを家族で共有する——銀行口座・不動産・証券口座・保険がどこにあるかをリスト化しておく。「どこに何があるかわからない」が凍結後の最大の混乱源。金融機関の「予約型代理人サービス」も早めに登録しておくと安心
- 制度の使い分けを整理する——不動産の管理・売却が中心なら家族信託、療養看護まで含めて備えるなら任意後見が向く。兄弟姉妹がいる場合は家族信託に全員の合意が必要なため、今のうちに話し合いの場を作っておく
- 自分自身の備えも50代のうちに動く——60代以降は判断能力の衰えが始まりやすく選択肢が急に狭まる。NISA・iDeCo・不動産など自分の資産一覧も、家族が読める形で整理・更新しておく
- 予備資金を生活口座とは別に確保する——口座凍結は「ある日突然」起きる。医療費・介護費の急な支出に備えた予備資金(生活費1年分が目安)を別枠で用意する。法定後見になった場合の報酬(月2〜6万円)も老後の生活費計画に織り込んでおく
- 「自分が判断できなくなったら」を家族と話しておく——どうしてほしいかを言葉と文書で残しておくことが任意後見の出発点。早く動くほど選択肢は広く、本人の意思が尊重される
